子どもの頃、週末に訪れる祖父の家では、
五右衛門風呂に薪で火をくべ、湯を沸かす祖父や父の横で、
様子を眺めたり、薪割りを手伝ったり。
いつまでも温かいお風呂は、特別なお風呂でした。
大人になってから、薪窯で焼いたパンの、
言葉に表せないほどのおいしさを知りました。
パン生地の中では、目に見えないところで、
乳酸菌や酵母菌がおいしさを作ってくれています。ミクロなのに大きな世界。
微生物が作用したシンプルなパンは、
茶碗によそったご飯のように日々の主食になります。
本当はごはん党の私(小さな声で・笑)が、
お味噌汁や納豆と一緒に食べてもらえるような、
毎日食べても飽きないパンを焼きたいと出した答えが、
小麦、塩、水だけで捏ね、薪を使った石窯で焼くことでした。
発酵種と薪火に添って力を借り、人々の日々に寄り添うパンを焼くー
そんなふうに想っています。
Kyoko Nishimura